2 相続税が上がると どうすればいいの

 相続税や贈与税では、負担に対するいろいろな配慮がなされています。住まい(小規模宅地等の軽減特例)や遺産に対する配偶者の貢献・生活保障(配偶者控除)、扶養義務者間の生活支援(贈与税の非課税)、未成年の相続人(未成年者控除)に対する配慮などです。

 したがって、これらを活用することにより相続税がかかる場合でもかからなくなったり、税負担が軽減される場合があります。しかし、これらの軽減措置や特例は、一定の条件が付いており、そのほとんどは申告等一定の手続きが必要です。

 したがって、今回の改正で相続税がかかる人が増える、相続税が増えるということは、きちんと手続きすれば相続税がかからなくなったり、税負担が軽減される人が増えるということです。これが今回改正のもう一つの隠れた意味です。

(1)相続税の負担を軽減する方法には二つある

 相続税の基本的なしくみ(1(1))からわかるように、相続税の負担を軽減する方法は、課税遺産額を減らすか各人の相続税の計算において減算項目を増やすかの二つです。

 具体的には、次のような方法の組み合わせになります。

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(2)まず、最初にすべきことは

 まず、最初にすべきことは、相続税がかかるかどうかの見極めであり、そのためには、財産・債務のリストアップが必要です。

 マンションの取得資金を子供に贈与するには住宅取得資金の非課税贈与が使えますが、もし遺産が基礎控除額以下であるならば、親名義でマンションを取得し、相続時に子供に相続させれば済むことです。贈与税も相続税もかかりません。わざわざ面倒な住宅取得資金の非課税贈与をする意味はありません。

 いずれにしても、遺産(財産・債務)の状況が分からないことには手の打ちようがありません。

 

(3)次にすべきことは

 相続は生活資源の引継ぎですから各人の生活に対する配慮が必要です。老後の生活の糧が必要な人もいれば、教育資金が必要な人もいます。遺産を不動産や事業に投資した方がいい場合もあります。

 しかし、息子が都会から帰ってくるということで豪邸を建てたら、息子は帰って来ず、固定資産税の支払いにも困るようになったとか、相続税上有利だというのでローンを組んで貸家を立てたらうまくいかずローンだけが残ったとか、養子縁組して法定相続人を増やしたら相続が“争族”になったとか、そういう話もあります。いろいろなリスクを伴うということです。

 つまり、相続に関しては、相続税の有利・不利だけでなく、こうしたリスクや被相続人・相続人の生活に目配り・メリハリの利いた適切なアドバイスが必要です。

 以下、相続贈与に関して、そのポイント注意すべき点等を順次説明します。

 

(4)相続・贈与税では「お金」と「物」は違います。

 「お金」は表から見ても、裏から見ても1万円は1万円ですが、「物」は違います。昨日300万円で買った自動車も今日は300万円では売れません。

 そこで、相続・贈与税では、物については、一定の方法で評価した評価額をもってその物の価格(課税価格)とします。おおむね土地は実勢価格の7~8割程度家屋は6割程度です。

 財産をお金で残すのと、物で残すのでは違うということです。贈与の場合も同じです。ここが相続・贈与税の一つのポイントです。

宅地・家屋の評価

財産

評価方式

評価額(目安)

宅地

路線価方式/倍率方式

実勢価格の7~8割程度

家屋

固定資産評価額

実勢価格の 6割程度

 

ⅰ 「お金」を「物」に変えると

 法定相続人3人の場合、相続税の基礎控除額は4800万円ですから正味遺産額が8000万円だと相続税がかかります。しかし、これが土地・家屋だとすると、正味遺産額は概算で5600万円程度(=4000万円×0.8+4000万円×0.6)となります。正味遺産額がお金であった場合と比べると遺産額が3割減ったことになります。税額でいうと、相続税総額が440万円から80万円に減ります。

 

ⅱ それが小規模宅地等だと

 この正味遺産額8000万円のうち土地が小規模宅地等の軽減特例の対象となる居住用宅地だとすると、更に80%が減額されるため、正味遺産額は3040万円(=4000万円×0.8×0.2+4000万円×0.6)となり、相続税はかからないということになります。

 ただし、これは贈与には適用がありません。

 

ⅲ 借金して住宅等を立てると

 老後の生活資金として4000万円を残し、自己資金4000万円とローン4000万円で上記と同じように居住用の土地・家屋各4000万円の計8000万円を取得すると、借金はお金と一緒ですから額面額で評価され、債務控除されますが、物は相続税評価額によるため正味遺産額は小さくなります。この場合は、正味遺産額は3040万円(=お金4000万円-ローン4000万円+土地4000万円×0.8×0.2+家屋4000万円×0.6)となります。

 つまり、老後の生活資金を確保しながら正味遺産額を圧縮することもできるということです。ただし、この場合は、金利が生じますし、ローンを誰が引き継ぐのかということも出てきます。

 借金をして駐車場アパート・マンションを建てると相続税が有利になるという話を耳にした人もあるかと思いますが、これもこれを応用した仕組みです。ただし、この場合は、生活設計だけでなく、事業のリスク、承継者を含めた事業設計が問題の焦点になります。

小規模宅地等の軽減特例

小規模宅地等

改正前(H22.1.1以後)

改正後(H27.1.1以後)

上限面積

減額割合

上限面積

減額割合

居住用

240㎡

80%

330㎡

80%

事業用

400㎡

80%

400㎡

80%

不動産貸付

200㎡

50%

200㎡

50%

(注)改正後は居住用と事業用の特例は完全併用制ですが、要件は各相続人ごとに判定です。

 

(5)配偶者控除と第2次相続

 配偶者が遺産を相続しても1億6000万円までなら相続税はかかりません。また、法定相続分までなら金額無制限で相続税はかかりません1(1)B-2)。

 では配偶者控除は目一杯とるのが有利かといえば、単純にそうともいえません。

 いずれ残った配偶者についても相続が発生します。これを第2次相続といいますが、その場合には、配偶者控除は使えないからです。どちらが有利かは、遺産額や遺産の構成、相続の仕方によります。

 配偶者の相続については、もう一つ配慮すべき点があります。それは夫婦連携プレーによる相続税の節約です。

 配偶者控除を使って無税で遺産を引き継ぎ、第2次相続までの時間を使って亡くなった配偶者ができなかった生活費や教育費の生前贈与(非課税贈与)、有利な遺産への変更等を残った配偶者が行い遺産額を減らすこともできます。

 

(6)贈与をめぐるよくある間違い

 生前に贈与すると遺産が減るのは明らかですが、贈与に関しては、しばしば思い違いや勘違いがあります。

 

ⅰ 子・孫名義の貯金は贈与か

 子・孫名義で貯金しただけでは贈与になりません。贈与とは無償で財産を与える合意(契約)のことです。したがって、子・孫の合意がなければ贈与は成り立ちません。また、財産を「与える」とは、その支配管理を移すことですから子・孫名義で貯金しても貯金通帳や祖父母や親が管理しており、子・孫がそれを自由にできないのでは贈与にはなりません。

 

ⅱ 連年贈与には贈与税はかからないか

 よく「年110万円までの連年贈与なら贈与税はかからない」と思っている人がありますが、贈与税の基礎控除額110万円ですから110万円までなら誰から贈与を受けても贈与税はかかりません。

 しかし、贈与税は、暦年ごとのすべての人から贈与を受けた財産に課税するものです。一方、連年贈与というのは、ある人からある人に連年にわたって贈与する合意のことです。合意は一個ですからその時に連年にわたる一つの贈与があったことになり、その合計額が課税対象となります。例えば、110万円づつ10年間の連年贈与だとすると、合計1,100万円の定期給付金の贈与となり、6割評価で660万円が課税対象となります。これから基礎控除額を引いた550万円に税率を適用して、100万円の贈与税がかかります。

 つまり、誰からかを問わず年々110万円までの贈与を受けても贈与税はかかりませんが、110万円の連年贈与なら贈与税はかからないというのは間違いということです。

 したがって、税務調査に当たり、「連年贈与したのですからいいのでしょう」などといえば、まず課税されると思った方がいいでしょう。

 

ⅲ 贈与税の配偶者控除

 婚姻期間20年以上の配偶者に対し居住用不動産又はその資金を生前贈与した場合、贈与税の基礎控除のほか2000万円が特別控除されますこれを使って配偶者に遺産を移すという方法もあります。

 このポイントは、配偶者に相続が起こった場合、法定相続人数が1減りますが、相続税の基礎控除が2度使えるという点です。したがって、配偶者の財産が多くない場合、全体として相続税負担が減ります。

 

ⅳ 贈与財産は贈与時の評価額による

 相続開始前3年以内の贈与とか相続時精算課税とかは、その贈与財産が相続時になおあるものとして相続税の計算し、先の贈与税を精算しますが、その場合に贈与財産の価額は、贈与時の価額によります。物価が下がったり、減価していても考慮しませんから注意しましょう。

 また、生前贈与には上記のように相続時に組み込み、再計算されるものとそうでないものがありますのでこれも注意が必要です。

 

(7)教育資金の一括贈与

 これは、今回の改正で導入された贈与税の非課税制度で父母や祖父母(直系尊属)から1500万円までの範囲内で教育資金の一括贈与を受けた場合は、贈与税を非課税にするというものです。ただし、受贈者が30歳に達するまでに教育資金に充てられなかったものについては、贈与税が課されます。

 この制度を利用すれば1500万円までの生前贈与ができるということで多くの関心を集めていますが、これには次のようなネックがあます。

ア この資金は金融機関(信託銀行、銀行等)に信託等しなければならず、非課税の扱いを受けるのは教育資金に充てたことを裏付ける領収書等を金融機関に提出しなければならないこと。

イ 上記により受贈者が30歳になるまでに教育資金に充てなかった金額については、贈与税が課されること。

ウ 使途が学校等に支払う教育費に限定されていること。

 

ⅰ 扶養親族間における生活費・教育費の贈与は、金額無制限でもともと非課税です

 ほとんどの人は意識していませんが、親族間では生活費、教育費の贈与は、日常的に行われており、これについては法律で扶養義務者相互間における生活費・教育費に充てるための贈与で通常必要と認められるものについては非課税と定められています。

 衣食住という言葉があるように子供を育て、教育を受けさせるためには、食事をはじめ、衣服や住まい、交通その他の生活費、教育費がかかりますが、もともとこれらは金額無制限に贈与税は非課税です。ただし、これらの贈与は生活費や教育費に費消されるものですから受贈者の資産形成になるようなものは含んでおらず、必要のつど贈与されるものです。もっともご主人が奥さんにまとまったお金を今月分の生活費として渡し、必要な都度支出し、費消する権限を委任することもできます。この場合、まとまったお金は、渡した時点では管理を委ねているだけで、贈与していません。夕食費とかに費消した時点でご主人から家族に贈与したことになります。したがって、これも都度贈与です。子供に対する仕送り金も同じようなものです。

 今回の教育資金の一括贈与の意味は、この点です。教育資金の一括贈与により受贈者の資産が増え、資産形成となりますが非課税にするということです。

 

ⅱ 教育資金の一括贈与と生活費・教育費の都度贈与との比較

 教育資金の一括贈与と生活費・教育費の都度贈与とを比較すると次のようになります。どちらを選択するかは任意ですが、それぞれの実態に合わせ合理的に選択するのがいいでしょう。

 

教育資金の一括贈与

生活費・教育費の都度贈与

使途の制限

学校等に払う入学金、授業料、保育料、教科書代、給食費等
学習塾、スポーツ教室等の費用

通学交通費、食費、下宿代、留学の渡航費・滞在費、参考書代、シューズや衣服代なども含む。

金額制限

1500万円まで(学習塾等については部分制限あり。)

通算でもその都度でも制限なし。

手続

・申告や信託等が必要
・払い出しに領収書等が要る。

特に要らない。

 


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